夢からさめてしまわぬように
秋になった。早くも金木犀の花がコンクリートをオレンジ色にし始めている。
この時期に雨が降ると、あの香りを放っていた花が砂や泥の黒と混ざって、いつの間にかなくなったな…と思うとすぐに冬になる。
早く冬になって欲しいような、そうでないような。
出向期間が終わって、3日前から元いた職場に戻ってきた。
あっという間の1年半が、夢の世界だったかのような気がする。
それくらい、仕事が楽しかった。出逢えて、一緒に仕事が出来てよかったなあと心から思える人たちとも別れて、たった3日でホームシック。
正確に言うと、戻ってきた今の世界が元は私のホームだったはずなのに。
なんだか、私がいた世界はとても狭かったんだなあと思う。
このまま、あの時間を夢にして忘れてしまうのは嫌だ。今ここで、どうやってもがけばいいんだろう。
たぶん、周りの皆が感じる私たちの世界の狭さって、こういうところなんだろう。
不器用でも、うまくできなくても、皆自分の世界を懸命に生きている。
外を歩いてれば自分もその1人なのに、あの中にいるとわからなくなっちゃうのかな。
本当に、今の場所は不思議な世界。
夢の世界の感覚を忘れないようにしていきたい。
今いる場所に、ただ嘆いたってだめなんだ。
飲み込まれる前に、飲み込んでやれ。