声にださないこと

きのうから声が、突然でなくなった。

声帯がやられているらしい。

あまり喋らず、安静に。



声にならないことを、空気で言ってみる。

いたい。

くるしい。

せつない。

こいしい。

さみしい。

もうだめだ。

もうだめなのかな。

これから何か変わるのかな。

まだ一緒にいられるんだろうか。

というか今一緒にいるんだろうか。

空気しか出てこないから、ひとりで内緒ばなししてるみたい。



くしゃくしゃのパーマあたまがすきだ。

笑うとなくなっちゃう優しい目がすきだ。

高くも低くもない、甘やかな声がすきだ。

自分のやりたいことにまっすぐなとこも。

なんやかんやと頑張ってるとこも。

なのに、気がぬけると極端にだらしなくなるとこも。

同じ呼吸を感じられるとこも。

自分の世界に入っちゃうとこも。

人に対して、不器用なとこだって。

すきなんだよ。

うん。

すきなんだ。



なんだかこわくて、もうそんなことも声にできない。

だから、ここぞとばかりに自分と内緒ばなし。

空気でもいいから口にしないと、また渦にさらわれる。

よし、だいじょうぶ。