よる
じりじりと、夜になる。
ぐらぐらな、夜がくる。
しんしんと、夜がふる。
ふらふらな、夜である。
お世話になったあの人。
携帯なくしたあいつ。
ちょっとカンの鋭いあのコ。
頭痛がってた彼。
いつもかわいそうな役回りのあやつ。
トロンとした目をした彼女。
同じ年でもだいぶ違う女性。
いろいろと悩める青年。
少し自分と似ている女の子。
みんな、すきだよ。
そんなことを思った帰り道。
その昔、ちゃんと好きだと言えなかった人に再会した。
私たちはすっかりおとなになっている。
苦かった時間が、優しい時間になった。
すきにもたくさんの“すき”があって。
風化してく想いもあって。
いつかそれが優しい気持ちで受け止められる時がくるなら。
今、なぜかどうしてもすきだと想う気持ちも、風化してくれるだろうか。
それを、よい思い出だと穏やかに感じられるだろうか。
明るく晴れた昼がうそみたいに、よるはくる。
空気が気持ちいい具合に冷える。
さらさらと、よるがなでる。
ふわふわと、よるをめでる。
ゆらゆらと、よるをこえる。