私が生まれ住んだまち
ひとり暮らしにむけて、話が着々とうごきだした。
次の週末には契約。
その次の週末には引越し。
たぶん、完全に住まいを移すのはその次の週末になるだろう。
この週末は、半年以上ぶりに土曜に出勤。
仕事のあとは後輩と食事して、パスタ屋で盛り上がって気付けば長い時間居座っていた。
真面目な話もアホみたいな話も、たのしかったよ。
帰りは夜の吉祥寺。もうすぐこの街が近くなる。
日曜日。
いきなり父親が“今度住む場所を見に行く”なんて言い出すので、急遽車を走らせる。
いい歳した娘に対して過保護な…と思いつつ、いい歳なのに嫁に行くどころか単身生活するとか言い出すから心配なんだろな…と思ったり。
実際周りの環境をみたら、母親は“いいじゃない!”ってノリノリだった。
ちょっと地元に似てるのよ。駅近だけど、閑静な住宅地。
月曜日。
祝日で休みの今日は、これまたいきなり母親が“山にのぼるわよ”とか言い出すからびっくり。
山を切り出してつくられた住宅地の隅っこには、山のぼりコースが存在する。
“こんにちは”ってすれ違って挨拶を交わすのは、両親と同じくらいの歳の夫婦が圧倒的に多い。
これから私の両親も、“よくいる”夫婦になるんだろうか、とか考えた。
そう高くはない山の頂。
そこからは、自分が生まれてからずっと暮らしてきた街が一望できた。
泣いて、笑って、怒って、そんなふうに成長してきた場所。
今のところ私にとっての生活は、この街がすべて。
家並みと自然が融合した街。
季節ごとにそのシーズンの花が至るところに咲き、緑が茂り、家の窓から見える山々が紅葉する。
冬は、東京より2、3度は寒い。
最寄り駅は電車が1時間に3、4本しか来ないから、私は毎日車で10分くらいの大きい駅まで行く。
最寄り駅を走る電車は4両、ボックス席が主流。
シーズンには山のぼり、川遊び、曼珠沙華をみにくる観光客で地元の駅はにわかに色づく。
コンビニなんて歩いて行ける距離にはない。
車で5分…はかからないかな?というくらい。
でも、別に不便は感じない。
そうやって、育ってきた。
今日はとても晴れていて、山頂からみた景色はキラキラしてみえた。
地元を離れてくひとも、自分が生まれて育ったまちの良さを忘れないでねと言わんばかりだよ。
実際、私は地元がすきだ。
だから、忘れるわけもないし多分しょっちゅう帰ってくる。
そう遠くないからね。
…なんて思ってたから地元を離れるさみしさはあまりなかったのに、今日の景色をみたらやっぱりさみしくなった。
山のぼりするなんて言ったオカンめ。アリガトウ。
あーあ。なんかちょっとセンチメンタルな気分。
でも、この街と同じくらい、新しい場所を愛するようになろう。
そうなれるように、私がたのしくやらなくちゃ。