やわらかい髪

旅から帰って、休み明けの今日。

たまっていた仕事もそっちのけで、お通夜に向かう。

赤ちゃんのころから可愛がってくれた、大好きな斜向かいのお家のおばちゃん。



この間病院へお見舞いに行ったときは、もうすごく苦しそうだった。

呼吸器に点滴。もう、瞳に私と母親が映っていたかはわからない。

その、2日後。

もう前みたいに笑いかけてくれることもなくなった。



今日会ったときは、苦しんだ顔でなく穏やかな顔をしていた。

私の中にいる、いつも笑顔で優しいおばちゃんのまま。

なでた髪が、柔らかかった。



“かわいいねぇ”

“ほんと、いつも助けてもらってるのよ”

“ありがとうね”

そんな言葉が口ぐせのように出てくるようなひと。

他人に優しく自分に厳しい…の典型のようなひとだと今になって思う。

親戚とか血のつながりがあるでもなく、今の時代にあんなにも可愛がってくれる大人がいた私は、とても幸せだ。



たくさん可愛がってくれて、ありがとう。

たくさんのあたたかさを、ありがとう。

久しぶりにおじちゃんと仲良く2人、ゆっくり過ごしてください。