虹色の、ばらの花
旅行カバンを取りに行ったりしつつ、この週末は実家に戻った。
まだ2週間ぶりの地元。
されど、2週間離れてたことはたぶんない。
まぁそれでも何がそんなに大きく変わるでもない。
変わらないことの安心感を得て、眠りについた土曜の夜。
お向かいに住むおばさん…年齢的にはおばあちゃんかな。
とにかくそのひとが、入院したと聞いてお見舞いに行った今日。
もうガンの末期と聞いてはいたけれど、自宅療養していて年末会ったときは元気だったのだ。
喋って笑って、手を握って別れたのに。
私や姉のことを本当の孫みたいに可愛がってくれた。
たぶん他人でそこまでしてくれるひとなんていやしない、というくらい大切に想ってくれていた。
だから私も自分のおばあちゃんみたいに思ってた。
花屋でブリザーブドフラワーを買った。
明るく淡い色合いの。
そこはモダンな花屋で、虹色をしたばらの花が売られていた。
毒々しいのか、ドリーミンなのかよくわからなかったけど、でもばらの花のかたちは美しいよなぁと心にひっかかった。
予想より遥かに容態は悪く。
ベッド上であのいつもの笑顔と、会えてうれしそうに名前を呼んでくれる声が聴けるかと思っていたけど。
それどころじゃなかった。
天井をむいたままの瞳は、私と母親をとらえただろうか。
酸素マスクの下でしきりにあああと声をあげる唇は、私たちがかけた言葉に反応していただろうか。
年末に握った手はミトンの中で。
変わりに握った腕に感触を得ただろうか。
また私の名前を呼んでくれることは、あるんだろうか。
ショックを拭えないままではあったけど、今日は両親と一緒だからよかった。
すぐにひとり住まいの家には帰ってこれなかったと思う。
実家の空気をたくさん吸って、あったかいごはんを食べて、夜になって私はまたひとりに戻る。
地元はやっぱり星がきれいだった。
東京と言っても、大都市でないこの辺り。
それでも、空は霞んでいる。
なぜか、虹色のばらの花が頭に焼きついて離れない。